2019年09月12日

ありったけの愛で 37

 

 

「あ、あの!ユノさん!!」


ベテラン生徒さんからアドバイスを受けていると、まっ赤な顔をしたチャンミン先生が声を掛けて来た。手が空いたのかと嬉しくなり、思い切り踏み込んで距離を縮める。

 

「なんですか?」


ただ聞き返しただけなのに。チャンミン先生は見るからに動揺して、一歩、後退する。

 
「どうされました?」

「そ、そんなに近付かなくても良いですから…」

「え?何ですか?」

 
小さな声が聞き取れない。って、演技をした訳じゃないけど、聞こえないふりをして、また距離を詰めた。すると、周りから歓声が上がる。チャンミン先生の顔が更にまっ赤になる。


集まる視線に耐えきれないのか。チャンミン先生は俺の手を掴み、強引にバックヤードへと連行した。

 

 

 

ここに俺が入っても良いのだろうか。積み重ねられた段ボールを眺めながら、そんな事を思う。

急に振り向くチャンミン先生は少し怒ったような顔をして、動きを止めた。

 

「あ、あの!ユノさん!」
「なんですか?」
「余りにも正直に言いすぎだと思います!!」
「そうですか?」

 
眉間に皺を寄せ、困った顔をされて…俺は今、責められているのだろうか。何か悪い事をしたかと、考えてみる。

 

「俺、悪い事しましたか?」
「そ、それは…」


首を傾げながら聞き返すと、チャンミン先生は困ったように視線を逸らす。

 


「悪い事をしたなら、言って下さい。謝ります!」
「謝る程の事では…」
「何でも思った事を言って下さい!」
「あ…」


ここは誰にも見られない場所だ。そう思ったから…ってだけじゃないけど、一段と踏み込み、距離を詰めた。


唇が触れそうな距離で問い掛けると、チャンミン先生の吐息が掛かる。

 

「俺は何か、悪い事…」

 

あと少しの距離を詰めたのは…俺?それともチャンミン先生だった?

どちらが動いたのか分からないけど、唇が重なる。

 

キスをしても良いか、聞いていないと、ハッとした。でも、回された腕のお陰で、直ぐには離れられず、俺はこの状況を喜んでいた。

 

 

 

 

 

「んん…」

 

僕とユノさんしか居ない空間に…漏れる声が響く。


身体が勝手に動いた。それは気のせい?僕じゃなくて…ユノさんから動いてくれた?

 

そんなのどっちだって良い。


ああ、どうしよう。ここが何処でも関係ない。感じる熱さが気持ち良い。離れたくない。もっと感じていたい…。

 

我を忘れ、夢中で吸い付いていた時間は、どの位の長さだったのだろう。凄く短いようで…実際は長い時間だった?


幾らでも込み上げてくる欲求を止めてくれたのは納入業者さんの声だった。

慌てて離れ、何ともないような顔をして、受け取りのサインをする。


荷物を置いた業者さんを見送ってからも、ユノさんの顔は見られない。顔も耳も熱くて、動悸もする。呼吸も乱れて、混乱状態でいると、ユノさんの腕が延びてきて、引き寄せられた。

 



「ちゃんとしないと…」

「な、何をですか?」

「キスしても良いか、聞いてからじゃないと、駄目でしたよね…?」

「そ、それは…」

「怒られる前に、聞きます。またキスをしても良いですか…?」

 

確かに、そう言った記憶はある。でも、さっきのキスは責められない。今だって、そう。僕に決定権を与えないで良い。強引に唇を奪われても…怒ったりしない。…寧ろ、喜んでしまいそう。

 

そんな事を考えている間にも、ユノさんは距離を詰めてくる。

 

「…早く、返事をしてくれないと…唇が当ってしまいます」

「…そ、そんな事を言われても…」

 

止めるべきと分かっていても、拒みたくない。何も考えず、感じたい。そんな答えに至った時。また違う業者さんの声がした。

先生達が止める声がして、一安心したけど…急に冷静になってしまい…ユノさんの唇を指先で止めてしまう。

 


「ユ、ユノさん、今は駄目です!」

「……」


ユノさんは視線を逸らさずに、真っ直ぐ僕を見る。それから、唇に隙間が生じ…指先をペロリと舐められた。


「…っ!」


悲鳴を上げる訳にいかない。慌てて、手を引こうとしたのに、ユノさんに止められる。


「今が駄目なら、いつなら良いか、教えてくれませんか?」

「…っ」


なんて事だろう。ユノさんがいつもと違う。

放たれる濃厚な色香にクラクラして…僕は倒れそうになっていた。








 


 

 

 

posted by てつちゃ at 16:00| Comment(0) | 生徒と先生。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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